2010年01月29日

専門家のコメントその2

消費者はどう行動するか
http://www.osakagas.co.jp/cel/pdf/f030219a.pdf#search=

規制緩和、環境問題の圧力など、ガス事業者のみならず、エネルギー事業者は大きな経営環境の変化に直面しています。一言で言えば、従来の公益事業的発想では時代に追いつけなくなってしまい、今後は普通のサービス業としての振る舞いが求められることになります。それをもう少し象徴的な言い方で表現するならば、供給重視から需要重視へということになるのではないでしょうか。
もちろん、エネルギー事業者が、今までお客さまをないがしろにしていた訳ではありません。しかし、少なくともエネルギーそのものを家庭に販売する面に関しては、総括原価方式や限られた競争環境の下、お客さまとは何かを知ろうというインセンティブは十分なものではなかったように思います。逆にいえば、今後、「お客さまを知る」という努力が一層重要になるだろう、これがこの連載における最大の問題意識です。
第1回は身近なトピックとして、家計簿の話から始めましょう。身近といっても日本全国で家計簿をつけているのは、全家庭の3分の1程度だそうです。その上、家計簿は、主婦がつけるものというイメージが一般的で、余り馴染みはないかもしれません。ところが最近出版された「家庭決算書」(依田宣夫著・プレジデント社)では、(夫でも妻でもいいのですが)「家庭経営者」たる人物が責任を持って、しかも複式簿記方式で
家計簿を管理することを提唱しています。ご承知の通り、普通の家計簿といえば、支出と費目のみを記帳する、いわゆる「単式簿記」方式がほとんどです。ではなぜ、複式簿記方式でなければならないのか。また、家庭経営者とは何を指しているのでしょうか。
それらを考えるにあたっては、お客さま側も、エネルギー事業者と遜色がないぐらい大きな環境変化に直面しているという事実を認識する必要があります。足下では長引く不況と雇用環境の悪化、長い目で見ても少子高齢化や社会保障水準の低下懸念等があります。大きな流れでいえば、経済社会を活性化するために、国は市場の機能を活用しようとし、結果として自由・競争と自己責任がセットでお客さま=生活者に降りかかって来つつあります。
生活者を取り巻く「リスク」(チャンスもですが)が増大し、その下で適切な意思決定をしなければならなくなっているということです。つまり、普通の生活から、より戦略的な生活への変化が求められていると言えるでしょう。この文脈で、家計簿の話を思い返していただくと、理解がしやすくなると思います。
生活者は、自らを取り巻く外部環境を適切に把握し、自らの目的を遂行するため、戦略的な意思決定を行わなければなりません。そのためには単なる生活者ではなく、自らを家庭経営者だと認識し、家庭(家計)に関する情報を十分に整理して理解しておく必要があります。そのためには、単なる
お金の出入りだけを記録する単式簿記ではなく、家計の資産や負債の状況を把握し、資金を調達し、住宅建設や教育などの投資をいかに行っていくべきかを統一的に判断することのできる、複式簿記方式での生計管理が必要だということです。
もちろんこれまでにもマネー(マイクロソフト)などの資金管理ソフトは存在しました。しかし、会社経営の実例が家庭経営に参考になるのであれば、複式簿記式家計簿というのはそれらと整合的でわかりやすいツールになり得ます。複式簿記式家計簿は理解に若干の努力が必要ですので、これが一般に定着するかどうかはやや疑問ですが、少なくともそのようなことが議論されるような時代になったという認識が重要です。
ただ、家庭の経営は、ある意味で会社経営よりも複雑です。利益だけを追求するのではなく、資金繰りを適切に行いつつ、生活の満足を高めるための活動をいかに行うかという、複雑で多様な価値の追求が家庭経営です。そこでは、今まで論じたような、合理的な発想だけでは十分ではありません。時には合理性とは別の考え方が必要なのではないでしょうか。これがこの連載のもう一つの問題意識で、それをこれから「適応的」行動というキーワードで論じていきたいと思います。
例えば、時間や情報処理能力の制約の中で、さまざまな利害に配慮しつつ、判断を行わなければならないとき、すべての情報を統合した上で「最適化」するこ
とは実際上、難しいことがあります。そんな時、間違いを起こす危険性は高いけれども情報処理節約的な、ヒューリスティクス(ここでは直感的な状況判断ぐらいに考えておいてください)という方法を利用する場合が多く見られます。それは生活者にとって良い判断なのかどうか。また、エネルギー事業者がそれにどう対処すべきなのかということは、重要な論点だと思います。合理的経済人による家庭経営と、適応的社会人による家庭運営、生活者はその両方を求められているとの考えのもと、やや後者に重点を置きつつ今後論じていきたいと考えています。
(学習院大学経済学部特別客員教授(当時) 豊田 尚吾)


         
ホームページ

   「家庭経営と家庭決算書」
    http://www.kateikeiei.com/

posted by 依田宣夫 at 11:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 専門家のコメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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